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NEWSとKAT-TUNとハロプロ、ジャニハロDDヲタ、普段は二次元にいる

傘をもってるわたしたち

加藤シゲアキ先生の本、「傘をもたない蟻たちは」を読みました。

 

感想書きたいなーと思ったから書きますが全体的に辛めなのでご注意ください。ていうかすっげー叩いてるよ。けちょんけちょんに言ってるよ。登場人物たちへの悪口をひとしきり吐き出さないと気が済まなかった。

(誤解しないでいただきたいのは、つまらなかったわけではないです。面白かったです。面白い面白くないと好き嫌いは違うということです)

あと思いっきりネタバレしてるので、ネタバレを目にしたくない方は読まないほうがいいです。あと自分語りも激しいです。ごめんなさい。

 

 

わたしはNEWSだとおそらく手越担にあたるのだろうけど、DD気質なのでシゲのことも好きです。その「好き」は、シゲが作家加藤シゲアキでいることも大きくて、多分、シゲが小説を書いていなかったら、そしてシゲの小説が面白くなかったら、今ほどは好きじゃなかったと思います。

そもそもわたしは活字を読むという行為が好きなのです。小中高大、学校の図書室に足しげく通う子どもでした。大人になってなかなか一般の本を読まなくなってしまったけれど、シゲの本はこれまでの3冊全部買って読んでるし、ピングレコミカライズも買ったし、友人知人に勧めまくったし、チャンカパーナイベントでシゲと握手したときにてんぱって「ピングレ実写化楽しみにしてます!」とそれだけ口走って流されたこともあります。てんぱりすぎてその横に立ってた本命のはずのコヤテゴの記憶が真っ白に飛んで、それ以外はまっすーの厚みに圧倒されたことしか覚えてない。でもピングレ実写化は実現したので、わたしのあの言葉もそう的外れな発言じゃなくなったはず! やったね!

3冊読んだ時点でのわたしの評価はピングレ>閃光スクランブル>Burn.でした。文章の洗練度は完全に逆でBurn.>閃光スクランブル>ピングレ、エンタメとしての面白さを感じたのもその順なんですけど、内容の好みでいけばピングレが一番好きです。好きなので、渋谷に行ったとき無駄にラケルでオムライス食べたりしたし、作中の出来事と照らし合わせて山Pの仕事履歴調べたりもしました。『獅子座流星群:2001年11月18・19日、美女か野獣:2003年1月~3月 山Pの情熱大陸:2008年3月2日 山Pのananヌード:2008年2月7日 BANDAGE:2010年1月16日』ってツイート残ってた。

で、「傘をもたない蟻たちは」なんですけど、評価のどこに入るかと言うと、4番目です。

読み終わったときのわたしのツイートがこちら。

シゲの本読了。かなり面白かった。やっぱりシゲはすごい。でもこの本を好きか嫌いかと言われたら嫌い。それはわたしが文学が嫌いだからです

文学が嫌いっていうか、文学あいつ、文学の名の下なら不倫や浮気やセックスを高尚なものみたいに書いてもいいみたいな感じあるじゃん、文学のそういうとこほんと考え方合わない

今回の本を読んで、全体としてエンタメよりだいぶ文学寄りに振られたなと感じました。表紙を見たとき「今までと違ってかなりのサブカル臭がする」と思ってちょっと嫌な予感はしてたんですけど的中した。わたし昔から文学が苦手だったんですね、だって登場人物みんな軒並み性格ひどいことが多いんだもん。口が悪くて申し訳ないのですが舞姫読んだときは主人公クズじゃん死ねばいいのにと思ったし春琴抄とかイライラしかしなかったんだけどあれのどこがいいの? 何が優れてるの? 完璧に偏見だとわかった上で物を言いますと、文学って人間の性(生ではない)と死と悪徳を扱っとけば素晴らしいとされる傾向ないですか。不倫とか浮気とか暴力とか自殺とか殺人とか麻薬とか、通常悪いとされていることも、文学作品で描くと高尚な芸術表現~みたいな、許されるし、肯定的にもてはやされるじゃないですか。もうマジ、あいつのそういうとこほんと合わない、わたし文学と友だちづきあいできないタイプの人間!

十二国記で珠晶が「まっとうな人たちの誠意はどこへ行けばいいの?」という表現を使っていたけれど、多分そういうのに近いと自分では思ってる。

で、「傘をもたない蟻たちは」は読んでいて嫌な感覚を終始味わう話ばかりが詰めこまれた短編集でした。飲み込めない後味の悪さ。

翔くんとの対談で、シゲはセックス描写を必要だと思ったから書いたと言っていたけれど、それは文学として評価されたい気持ちが逸ったために感じた必要性じゃないかなあ。本当に必要だったかなこれ。不倫と浮気とセックス書いておけばそれらしいものになると思ってないかな…。まあ「ジャニーズなのに過激な性描写にも挑戦!」ってメディアに取り上げられて話題にはなったので売る戦略としては間違ってない。

 

冒頭でも言いましたが、本がつまらなかったわけではないです!! 面白かったです。誉めるところばっかりだよ。読みやすかったし、文章もおしゃれで、はっとさせられる表現も多々あって、展開もよく考えられていて、感心せざるをえないようなひねりも効いていて、読み始めたら一気に読み終えてしまったし、こういうものが書けるシゲはすごい。まずアイドル業と並行して書きあげる時点で尊敬するしね! 好き嫌いは作品の完成度には少しも関係ないですから、作家加藤シゲアキへの評価が揺るぐわけではない。シゲはストイックな努力家だ、という感想を、わたしは勝手に持ちました。できるだけ売れて欲しいしみんなに読んで欲しいし次の本も買うよ。

 

だからわたしがこの本を嫌いなのはシゲが悪いのではまったくなくて、単にわたしの倫理観と合わなかったというだけなのです。不倫した人間は高額な慰謝料取られて世間から後ろ指さされればいいと思ってるし、浮気した人間は本命にも浮気相手にもこっぴどくふられればいいと思ってるからなのです。

万引きする人や、歩き煙草する人や、道にゴミを捨てる人や、電車に空き缶を残していく人、そういう人のことを理解できないし許せないと思う「自分倫」の基準のようなものがわたしの中にはあって、「傘をもたない蟻たちは」は、見事にそこに触れてしまったので、登場人物の誰もかれも全然共感できないし、愛せないし、なんならこの後の不幸を願ってます。ピングレなんか最後悲しすぎて自分の中で整理するためにごっちとりばちゃんをどうにか後味のいい方に持っていけないかと傲慢にも救済小説書いてしまうほどにまで思い入れたというのに…。

でも共感が得られないなんてことはシゲももちろんわかったうえで書いてるので、そこは狙い通りなんだろうな。くぅ、踊らされているぜ。

それではひとつひとつの感想いきます。

 

染色

 6篇の中で純粋に一番小説としてまとまっていると感じました。すんなりとした流れるようなお話で読みやすいです。

ただわたしは主人公の文登がすっげえ嫌い。彼女の杏奈がいるにもかかわらず、出会ったばかりの美優と葛藤もなくすぐ寝た浮気野郎だから。そんなとこはすんなりしなくていい。しかも杏奈と付き合ったまま美優のとこに毎日のように入り浸ってはセックス三昧の日々を送り、でもクリスマスには杏奈とデートしてまたセックス、継続的な二股です。猿かよ!! セカンドラブの亀だってそこまでしないよ!! しかも全然悪びれる様子がないんですよこいつ! 最低!! 美優と「激しく抱き合った」後に将来の話になって逃げて雪の中さまよって高熱出してその看病に杏奈呼ぶんですよこいつ! 一週間泊まり込みで看病させるんですよこいつ! お前に罪悪感はないのか、お前の血は何色だ、そのまま高熱で死ねばいいのに!! 美優も美優で、あちこちの橋脚にカラースプレーで絵を描いては逃げるメンヘラの落書き犯です。自分の肘から指にスプレーを吹きかけて汚し(そうしていないと精神が不安定になって号泣する)、その汚れた手であちこちべたべた触ります。信じ難いことに居酒屋でそれをやるんですよこの女。グラスとかテーブルが汚れるんですよ。迷惑極まりない。とどめに人の顔面にいきなりスプレー吹きかけるんですよ。失明したらどうすんだよ。アーティストならなにやってもいいとでも思ってんのか。でもこの話の中では美優は稀有で美しい女みたいに描かれている……今の僕には理解できない。先ほど「一番小説としてまとまっている」と言いましたけど、そこが嫌。最終的に小綺麗な話にしようとしてるのがほんとむかつく! 身も蓋もないまとめかたをすると芸術を理解できてる俺に酔って周囲を見下してる男が彼女とメンヘラ芸術家と二股かけておいしいとこどりしてたらいつの間にか現実がせまってきて挫折しただけだからね! 最後の文のあと文登が杏奈にふられますように!!!!

 

Undress

 ストーリー的には世にも奇妙な物語パート1って感じです。世にも奇妙な物語春の特別編とかで放送される想像が容易につく。どんでん返しにつぐどんでん返しで伏線も丁寧にはってあってよく練られた話でした。

もうね、登場人物全員クズ。クズしかいない。すごい。またしても周囲を見下してる「特別な俺、愚かな周囲」系の男が主人公。会社に愛情ない、仲間も愛してない、早くやめたい、会社のペットになりたくない、でも会社を引っ張ってるのは俺、とか思うのはまあ別にいいけど、同じ会社につとめてる人に公言したらだめだろ。「今のジャンル売れるからいるけど愛情ないし、アンソロのために集めた人たちも別に好きなわけじゃないし、早く違うジャンル行きたい、でもジャンル引っ張ってるのあたしだから」って同ジャンルの人に言うようなものだよ。そりゃ嫌われるよ。このたとえがピンとこなかった人は汚れのないそのままのあなたでいてください。

でもって主人公大西が1年前から付き合ってる彼女のリサは大西の知らないところでずっと不倫してる。入社してすぐ父親が死んだときに慰めてもらってから妻子持ちの石田のことが好きなんだってさ~! もう4年も付き合ってるんだってさ~! 奥さんのいない地方で堂々と不倫する舞台を整えるために大西のこと騙してたんだってさ~! 石田も奥さんと子どもがいるのに新入社員に手を出し、騙されてる主人公のこと陰で見下して嘲笑ってたクズだよ!! 奥さんと会社にばれればいいのにね!! ていうか大西たれこんじゃいなよ!! YOUやっちゃいなよ!!

まあ大西もクズだから全然同情はできないんだけど、大西がやめた会社の人たちも例にもれずことごとくクズだったから、多分企業倫理ぶっ壊れてるんだと思うわこの会社。やめて正解だったかもしれないね。ほんと人格を疑うんだけど、「大勢の会社員がボールペンを池に投げ込んでた」んだって。信じらんない、ゴミはゴミ箱に捨てなよね!!!! 黒幕の彼についてはあんまり言うことないけど間違いなくクズなので、後々こいつも誰かに裏切られて痛い目見たら面白いのにと思います。

 

恋愛小説(仮)

 ガールフレンド(仮)みたいな…。世にも奇妙な物語パート2。よくできた話。まず発想がいいなと思いました。こういうアイディア思いつけるの尊敬する。書き出しもいいよね、現実とフィクションの境界をわざと曖昧にする感じ。それがまた内容とよく合って効果的。

あと、この話はこれまでの2篇と違って、希望があるというか、目線が優しい。主人公は仕事の締切破るし夢に逃げるしオーバードーズしちゃうダメ人間ではあるけど浮気も不倫もしてないし公共施設への落書きもゴミのポイ捨てもしてないし「俺特別」と周囲を見下してもいない。自覚や反省はできるので、主人公連の中では好感が持てました。好感抱くハードルが低い。もしかしたら畳みかけるようなクズラッシュにあったせいでわたしの感覚がマヒしてるのかもしれない。

あのときのユキエちゃんがどうしてそんなことを言い、そんなことをしたのか、主人公には明かされないし、読者もわからない。夢の中のユキエちゃんが本物のユキエちゃんだったのか、僕の独りよがりな妄想にすぎなかったのかも、真実は誰にもわからない。でもそれでいいのだと思う。これはそういうお話だから。ひとつ懺悔すると、【男子の恋愛】を男同士の恋愛のことだと勘違いしてすみませんでした。

 

イガヌの雨

 世にも奇妙な物語パート3。す っ ご い あ り そ う ! ! 星新一のSSっぽい。「ん?」で始まって「何? どういうこと?」ってなって「なるほどそうだったのか」ってなって「ああー…そうなっちゃうよねえ…」で終わる不思議不条理もの。これ映像化したら映えるだろうなー。どっかで見た感じがしないでもないけど完成度高い。最後まで読んだらもう一度最初から読み返さざるを得ない。おじいちゃんの手紙すごかったね、あの説得力には唸らされた。

料理の描写がしっかりしてるのに、イガヌの味が具体的にどういうものなのか全然わからない書き方なのはわざとなのかな! 計算されたやつ? だってイガヌの味は知らないけどアジフライの味は知ってるからな。冒頭の筑前煮とアジフライがすっごいおいしそうで、でもイガヌは全然おいしそうじゃないんだよね。むしろグロい。猿のような頭に3つの大きな瞳、歯のない小さな口、胴体や腕がなく、二つの細い下肢だけが頭部から突き出るように生えている異様な生き物を、股を割いて頭に詰まってる臓器ごと食べるとか言われても、ちょっと想像が……トリコの世界ですか? わたしはイガヌよりアジフライが食べたいよお。

イガヌってなんなんだろう。シゲがどういう意図でイガヌを生みだしたのか気になります。多分いろいろ風刺が詰まってるんだろうから詳しく知りたいです。*1

 

インターセプト

 視点を変えると全く違う話になる、という面白さのある作品。世にも奇妙な物語パート4。真野ちゃん*2とか合うと思うんだけどどうかな。これもよくできてるんですよ、次々出てくる心理学の雑学も非常に興味深い。明日から実践してみたくなる知識が満載。読んでて楽しいお話です。新婚なのに不倫に抵抗のない、女を落とすことを自尊心満たすためだけのゲームみたいに考えてるクズ男と、いっちゃってるストーカー女の織りなす爽快大逆転劇です。破れ鍋に綴蓋のお似合いカップルなので、ついついストーカー女を応援しちゃうね。やられた! って感じ。ほんとシゲの手のひらの上だなー。

 

にべもなく、よるべもなく

 これねえ、評価が難しい……。好きじゃないことだけは確か。主人公の思考の移り変わりが、どうしてそうなるのか、途中でさっぱりわからなくなっちゃって。途中まではわかったんですよ、でも241Pからもう全然わかんない。今の僕には理解できない。なんでいきなりそういう思考に飛ぶ? 主人公は相当思い込みの激しい子なのかな?

幼馴染の親友が同性愛者だったと知り戸惑う←わかる

親友のことを理解しようと頑張る←わかる

頑張っても理解できずに苦しむ←わかる

葛藤を彼女にぶつけて無理矢理抱いてしまう←まだわかる

彼女をレイプしたり親友を理解できない自分は最低の人間だ←わか…る

生きていても迷惑だし海に入って死んでしまおう←わか…らない!!

わからないよ!! 発想が飛躍しすぎだよ!!!!

彼女をレイプして逃げて海行って入水自殺、と書きだして気付いたけどこれって染色の主人公と行動パターン一緒だね…!?

同性愛はいざ真面目に向き合うとなると難しいテーマですよね。最初にシゲが男性同性愛を書くって聞いたとき普通に恋愛小説書くのかなって思ってたけど全然違った。第三者の視線と当事者の視線が混じりあって昇華する、そんな試みがなされていた。シゲの挑戦的な姿勢には脱帽せざるを得ない。

漁師町で幼馴染の親友でちゃんづけで水泳選手でってFreeを思い出したけど内緒だよ?

 

まとめ

好きな順としては

恋愛小説>インターセプト>染色≧イガヌの夜>Undress>にべもなく

かな。

世界には数種類の蟻がいる。傘をもつ蟻、傘をもたない蟻。この本に出てくる蟻たちは確かに傘をもっていないけれど、コンビニの傘立てにあるビニール傘を平気でもっていきそうな感じの蟻で、わたしは鞄に折り畳み傘がいつも入ってる蟻なので彼らのことは理解できなかった、それだけの話。フィクションなんだからもっと柔軟に受け止めた方がいいのかもしれないけど、リアリティレベルが現実に近い位置に設定されてるとどうしても無理だよ。その点ではイガヌはファンタジー世界でリアリティレベルが下がるから多少緩和されている。

重ねて言うけど面白かったよ!!

フジテレビは世にも奇妙な物語特別編として早く映像化してください。

加藤シゲアキ先生のますますのご活躍をお祈りしております。

*1:その後、朝井リョウとの対談でイガヌはウナギの逆読みと判明

*2:真野恵里菜